自主財源を力に変える─地域と育てたVisit Kinosaki
- 地域版OTA運営支援
- プランメーカーポータル
- プランメーカーポータル ライト
豊岡市とDMOが運営するインバウンド特化の観光情報サイト、「Visit Kinosaki」。
“ただの器”にとどまらない地域版OTAとして、伴走しながら信頼を築き上げ、やがて自主財源を生み出すまでに成長。今では観光協会や旅館組合にとって欠かせない存在となり、地域の未来を動かす原動力になっています。
今回、その歩みと今後の展望について関係者に話を伺いました。
FLOWプロジェクトの流れ
課題
豊岡全体の認知拡大が求められていた
提案
地域版OTA「Visit Kinosaki」を導入し、伴走支援を行う
結果
自主財源の確保により、地域の活性化につながっている
- Visit Kinosakiとは
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豊岡市とDMOが運営するインバウンド特化の観光情報サイトです。充実した観光コンテンツを掲載するだけでなく、地域OTA(宿泊予約)機能も備えています。
最近ではサイト運用にAI活用するなど革新的な取り組みにも力を入れており、様々な地域のDMOからインバウンド向け観光マーケティングのベンチマークとして注目されるWEBサイトです。
INTERVIEWインタビュー
観光施策として始動した、豊岡発・地域版OTA
- Visit Kinosakiの成り立ちや背景について、教えてください。
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Visit Kinosakiはアメリカとフランスをメインターゲットに据えて、豊岡市の観光における認知を広げ観光客を呼び込むことを目的に立ち上げられました。
城崎について言えば、実は2002年頃から英語のウェブサイトを公開していたんですよ。これは観光協会が作ったもので、当時は観光地で英語サイトを持っているところなんてほとんどなかった時代でした。城崎温泉はその先駆けとして英語版を公開し、その内容が「ロンリープラネット」で「Best Onsen Town」として紹介されました。そこから海外のお客様が一気に増えたんです。
この流れをきっかけに豊岡市として観光施策に本腰を入れるようになり、「Visit Kinosaki」を立ち上げることになりました。計画は2013年頃に始まり、2014年からコンテンツ制作を開始。予約システム、いわゆる地域版OTAを導入したのはその2年後、2016年でしたね。
- VKを立ち上げるにあたって、地域の反応はいかがでしたか?
- 正直、冷ややかなものでした。「うまくいくはずがない」「そんなに人は来ない」っていう声が多かったですね。
- そうだったのですね。そこからどのように挽回していったのでしょうか。
- 地域OTAって、立ち上げ時には地元の当事者にさえも「うまくいくわけがない」と見られがちなんです。そして予約がそれほど入らなかったりすれば「やっぱり無理だった」と言われてしまう。だからこそ、最初からしっかり成果を出し関係者の皆さんに前のめりになって頂く必要がありました。
立ち上げ当初は空室検索ボックスのレイアウトをどのようにすると空室検索率が上がるか、どのような予約導線にすると予約率が向上するかといったUI/UXの変更テストを繰り返しました。なので、毎週サイト内のどこかが変わっていて、週次で数字の変化を追いかけていました。
また、現在は制度が変わり利用が難しくなりましたが、Google for Nonprofitsの広告プログラムを活用し、毎月1万ドル分の広告掲載無償提供枠をフル活用した広告運用なども行っていました。
でも、これはあくまで一時的なものです。長期的に見れば、一番大切なのは地域版OTAを“ただの器”にしないことだと思っています。
地域に伴走し、入魂された仕組みへ
- “ただの器”にしない、具体的にどのようなことでしょう。
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地域版OTAを単なるシステム導入で終わらせない、ということです。
仕組みを置いておくだけでは機能しません。私たちは立ち上げ当初から宿泊施設を一軒一軒訪ね歩き、現場でスタッフと顔を合わせながら「どうすれば予約プランが魅力的に見えるか」「どうすれば海外のお客様に伝わるか」を一緒に考えてきました。
時にはプラン登録そのものを手伝い、「この写真なら海外のお客様にも伝わりやすい」「この言い回しなら予約につながりやすい」といった細部にまで関わりました。そうした積み重ねによって旅館との関係性が生まれ、少しずつ信頼を得ていったのです。
つまり、ただシステムを導入して「どうぞ使ってください」と任せるのではなく、運用に伴走しながら“血の通った仕組み”に育てていくこと。その仕組みに魂を吹き込み、それを支える体制を徹底して築いていくことこそが、成功の鍵だったと思います。
- なるほど。そうしてVisit Kinosakiは「ただの器」にとどまらず、地域にしっかりと根を下ろした存在になったのですね。
- そうですね。観光協会から自分たちに託された以上、その信頼に応えるために「やってよかった」と思ってもらえるよう全力で取り組んできました。これは単なるマーケティング施策ではなく、地域に対する責務としての仕事だったと思います。
自主財源が育む、観光と地域の未来
- 地域の中で何か起きた変化はありましたか。
- はい。特に大きかったのは「自主財源」を持てるようになったことです。多くの観光協会は資金難に悩んでいますが、地域版OTAを導入することで「送客手数料」を収入源にできるようになりました。
例えば、2024年の豊岡観光イノベーションの財務報告によれば、送客手数料は年間で 1,300万円に達しています。DMO にとってこれは非常に大きな金額であり、自主財源を得られたことで、これまで解決できなかった課題にも取り組めるようになりました。
- 今後の展開として考えていることを教えてください。
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今後は「クラウド型サービス」に注力しています。従来のように地域ごとに専用のサービスを構築する「フルスクラッチ型」ではコスト面で導入が難しい。そこで、クラウド型のサービスに切り替え、より手軽に始められる仕組みを整えています。
観光協会の多くは資金が乏しく、何も施策を打てないまま衰退していくケースも少なくありません。だからこそ初期投資を抑え、まずは「送客手数料」という形で収入を生み出してもらう。収入が増えれば、次の段階としてウェブサイト改修やプロモーションなどに投資できるようになる。その循環をつくることを目指しています。
つまり、どんなに資金がなくても、少ない初期投資で始められ、まずは収益を得る。そしてその収益をもとに次の一手につなげる。クラウド型の地域版OTAは、観光協会にとって「種」であり「エンジン」として機能します。地域の魅力を観光客に伝え、さらに地域を活性化させていく仕組みなのです。